スイス式トーナメントとは?導入している競技やメリット・デメリットを徹底解説!
スポーツやゲーム大会の運営形式は、「勝ち抜き式トーナメント」「総当たり戦」など種類が多いです。
その中でも「スイス式トーナメント」は、公平性と特異性を含んでおり、特にチェスやカードゲーム、eスポーツなどの「運要素」が絡む競技で採用されることが多い大会方式です。
今回は、スイス式トーナメントがどのような形式なのか、どんな大会や競技に適しているかなどを詳しく解説します!
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スイス式トーナメント(スイスドロー)とは?
スイス式トーナメントとは、勝ち負けに関係なく、参加者全員が一定数の試合を行うトーナメント方式の一種です。
スイスドローとも呼ばれます。
勝敗が近い競技者同士で試合を繰り返すため、総当たり戦よりも全体の試合数は少なくなります。
また、トーナメントのように「一回戦敗退」といった厳しさがないため、最後まで一つでも上の順位を目指せる可能性が残っている点が特徴です。
このような形式の特性上、スイス式トーナメントは「運の要素が大きく一発勝負に向かない競技」「総当たり方式のリーグ戦をするには時間がかかりすぎる競技」などに向いています。
現在はチェスやカードゲーム、eスポーツ、相撲、将棋大会などで採用されています。
スイス式トーナメントの仕組み
スイス式トーナメントでは、参加者全員が事前に決められた試合数をこなします。
対戦の組み合わせは最初のみランダムで決まり、その後は勝敗数が同じプレイヤーやチーム同士で試合をします。
一度対戦したプレーヤー同士で試合が組まれないように調整することが一般的です。
参加者が奇数の場合は、常に1人不戦勝が出てきます。
対戦の組み合わせは「勝ち数が上位の人」から行うので、必然的に勝ち星がない人は不戦勝となります。
「32人規模の大会」を想定した場合の組み合わせ例は以下の通りです。
例)参加者が32名の場合(引き分けが発生しない場合)
1回戦:0勝0敗の人同士で試合をする(対戦相手はランダム)
2回戦:1勝0敗の人同士、0勝1敗の人同士で試合をする
3回戦:2勝0敗の人同士、1勝1敗の人同士、0勝2敗の人同士で試合をする
4回戦:3勝0敗の人同士、2勝1敗の人同士、1勝2敗の人同士、0勝3敗の人同士で試合をする
5回戦:4勝0敗の人同士、3勝1敗の人同士、2勝2敗の人同士、1勝3敗の人同士、0勝4敗の人同士で試合をする
1位を決めるには、全勝者が1人になるまで試合をする必要があります。しかし実際の大会では、必ずしも全勝者が出るまで試合を繰り返すわけではありません。
大会によっては、「スイス式トーナメントで1位を決める」「上位8人をスイス式トーナメントで決め、その後は勝ち抜き式トーナメントを実施する」などの場合があります。
このように、大会運営者はそれぞれの目的に沿った試合数を選択します。
スイス式トーナメントの歴史
スイス式トーナメントは、1895年にスイスで行われたチェス大会で初めて採用されました。
考案者は、スイス市民のユリウス・ミュラー博士です。
初めての実施場所がスイスであったため、今でもスイス式トーナメントやスイスドローと呼ばれています。
スイス式トーナメントは、チェスの大会で採用されたことをキッカケにして、囲碁やその他の競技にも普及しました。
普及に伴って、スイス式トーナメントに少し手を加えた大会方式も多数生まれています。
他の大会形式との主な違い
勝ち抜き型トーナメント、総当たり戦との違いを解説します。
勝ち抜き型トーナメントとの違い
勝ち抜き型トーナメントとは、やぐらの形をしたトーナメント表の順に試合を進め、勝者同士が試合をする形式のことです。
1位の勝者が決まるまで試合が続き、一度でも負ければ大会から脱落します。
このように、負けたら終わりの一発勝負が最大の特徴です。
対してスイス式トーナメントは、前述のように勝敗に関わらず最後まで試合があります。
初戦で強い人に当たり負けてしまっても、最後まで上位を目指せます。
勝ち抜き型トーナメントと違い、最初の試合と最後の試合で参加者の人数、試合数が変わらないことが特徴です。
総当たり戦との違い
総当たり戦とは、参加者全員と試合をする大会形式です。
全員と試合を行うので、勝ち抜き型トーナメントと違い「組み合わせが悪い」ということが起こらず、参加者の中で誰が一番強いかを公平に決めることができます。
ただし、試合の実施回数が(参加者数-1)回となるため、参加者が多い大会では実施が難しいです。
総当たり戦を採用した際の、参加者別必要ラウンド数は以下のようになります。
対して、スイス式トーナメントでは参加者全員と試合をするわけではありません。
しかし、勝った数が同じ相手と試合を繰り返すため、勝ち抜き式トーナメントと比べて公平に順位を決められます。
また、総当たり戦と比較した時に最も異なる点は、大会のラウンド数です。
総当たり戦は(参加者数-1)回のラウンド数となるのに対して、スイス式トーナメントでは半分以下のラウンド数で大会を運営できます。
以下がスイス式トーナメントを採用した時の参加者別必要ラウンド数です。
総当たり戦よりも必要ラウンド数が少ないことがわかるでしょう。
スイス式トーナメントを導入すべき大会の特徴
どのような大会がスイス式トーナメントを導入するべきなのか、スイス式トーナメントの導入を検討するべき大会の特徴をご紹介します。
1回の負けで結果を決めるべきではない大会
先行と後攻の差が大きいチェスなどの競技や、カードゲームなどの運が絡む競技は、1回の試合では公平に実力を把握できません。
プレイヤーの運や調子に左右されず実力を結果に反映したい場合は、複数回の試合数が確約されているスイス式トーナメントを導入するべきです。
公平性を重視する大会
試合の組み合わせの公平性を高めたい場合は、スイス式トーナメントを採用しましょう。
勝ち抜き型トーナメントでは、強い選手が多いブロックが生まれるなどで差が発生するケースがあります。
しかしスイス式トーナメントでは、試合の度に対戦相手をマッチングするので、試合の組み合わせから運の要素を減らすことができます。
総当たりによるリーグ戦を採用できればより運の要素を減らすことができますが、試合数が格段に増えてしまうため、一定の人数を超えると現実的ではないでしょう。
大人数の参加者がいる大会
スイス式トーナメントは、すべての参加者が同じ回数の試合を楽しむことができ、勝ち抜きトーナメントよりも実力を反映した結果を出すことができます。
例えば、参加者が1000名を超えるカードゲームの大型イベントでは、スイス式トーナメントで予選を行い、上位入賞者のみで決勝トーナメントを行うことが一般的です。
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スイス式トーナメントを導入している競技例
スイス式トーナメントは、さまざまな競技で採用されていますが、特に以下の競技で採用されています。
チェス
デンマークとノルウェーを除く多くの国で、国際チェス連盟が定めたスイス式トーナメントが採用されています。
デンマークとノルウェーでは「モンラート式」という、一手間加えたスイス式トーナメントが採用されています。
チェスのスイス式トーナメントでは、先行・後攻の回数も均等になるよう対戦が組まれることが特徴です
カードゲーム
カードゲームは運の要素が大きい競技です。
少しでも実力を結果に反映するために、スイス式トーナメントが採用されることが多いです。
多くのカードゲーム大会では、スイス式トーナメントで予選を行い、上位に入賞した選手が勝ち抜き型トーナメントで優勝を争います。
囲碁
日本の囲碁の大会では、棋聖戦のCリーグやSGW杯中庸戦でスイス式トーナメントが採用されています。
ヨーロッパやアメリカの囲碁の大会では、実績がある選手にあらかじめ勝ち点を与える「マクマホン式」という方式が採用されています。
こちらはニューヨークの囲碁クラブ発祥です。
eスポーツ
eスポーツでは、参加者数やゲームの特性によって開催形式を決めることが多いです。
趣味で参加する人が多いゲームであれば、参加者が長く大会を楽しめるようにスイス式トーナメントが採用されます。
大相撲
大相撲の幕下の試合では、スイス式トーナメントが採用されています。
幕下力士は取り組みの開催日程に対して人数が多いので、ランダムに試合を組むと全勝者が多発してしまいます。
大相撲では全勝者を減らすために、スイス式トーナメントが採用されました。
スイス式トーナメントのメリット・デメリット
最後に、スイス式のメリット・デメリットをご紹介します。
スイス式トーナメントのメリット
全参加者が複数回の試合を楽しめる
スイス式は、一度敗れても大会は終わらず、参加者全員で同じ数の試合を行います。
そのため、すべての参加者が大会を満喫することができ、一度の敗北による早期敗退の不満がなくなります。
結果が一つの試合に左右されにくい
各ラウンドでの結果が総合的な評価として反映されるため、一度の不運やミスが結果に影響することは少ないです。
一度負けても最後まで上位入賞を目指すことができます。
効率よく、公平に大会を運営できる
スイス式は、総当たり戦より効率よく、勝ち抜き型トーナメントより実力を結果に反映できます。
少し複雑な大会形式ですが、その分どちらのメリットも享受できる点が魅力です。
スイス式トーナメントのデメリット
組み合わせのマッチングが大変
多くの参加者がいる場合、「勝ち数が同じ人同士をランダムにペアリングできるか」「一度も対戦していないか」「先行と後攻の回数を均等にできているか」など、対戦相手の決定が複雑になります。
最終順位の選定が難しい
スイス式トーナメントでは、戦績が同じ人同士の順位を決めることが難しいです。
勝敗が同じ場合はどれだけ強い人と対戦してきたかで順位を決めますが、この計算がややこしく補助ツールが必要になることが多いです。
スイス式トーナメントで予選を行い、勝ち残り式トーナメントで優勝を決める場合は、参加者に戦績が同じ場合の順位の決め方を予め説明し、透明性を確保する必要があります。
まとめ
今回は、スイス式トーナメントがどのような大会形式なのかについて、詳しく解説しました。
スイス式トーナメントは、勝っても負けても参加者全員が同じ数の試合を行える大会形式です。
ルールは少し複雑ですが、すべての参加者が大会を満喫することができる点が魅力です。
大会の運営方式に悩んだら、ぜひ採用を検討してみてください!
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